残業代を請求するにつき、とり得る方法とその流れはどのようなものなのか

小山 雄輝
弁護士 小山 雄輝 (こやま ゆうき)

会社に残業代を請求したが、応じてくれなかったり、一応は応じてくれたが労働者側としては提案された金額や支払い方法に不満が残る。このような場合には代理人を立てたり、裁判所の手続きを利用して解決することになります。

その法的手続としては「労働審判手続」、「通常訴訟」、「少額訴訟」など、複数の手続きが用意されており、事案に合った手続きを選ぶことができます。しかし、一方でどの手続をとればよいのか迷われることも多いかもしれません。

以下においては、残業代請求の通知、示談交渉、労働審判手続、通常訴訟、少額訴訟を概観しながら、残業代を請求するにつき、とり得る方法とその流れはどのようなものなのかについて、説明することとします。

なお、特段の表記がなければ、「労働審判手続」の項における条文は労働審判法の条文を、「通常訴訟」及び「少額訴訟」の項における条文は民事訴訟法の条文を意味します。

残業代請求の通知

労働者が、残業代を請求する場合、まずは、使用者に残業代を支払うよう請求することになります。

残業代の請求には消滅時効がありますので(令和2年3月31日以前の発生分については2年、同年4月1日以降の発生分については5年〔当分の間3年〕。労基法115条、143条3項、附則〔令和2・3・31法13〕2条2項)、内容証明郵便や配達証明郵便により支払請求の意思表示(催告)をすることにより、時効の完成猶予の効果が期待できます(民法150条)。

使用者が支払に応じなければ、下記の示談交渉ということになります。

示談交渉

示談交渉の相手方は、使用者あるいはその代理人(使用者側の示談担当者)か、使用者の代理人弁護士が通常です。残業代を請求するについては、法的手続をとる場合に限らず、残業代請求を裏付ける証拠を準備しなければなりません。

タイムカード、賃金台帳、出勤簿、業務日誌、パソコンの使用時間の記録、メールや日記などといった労働時間がわかる資料を揃えた上、残業代の金額を計算し、示談交渉に臨むことになります。残業代を裏付ける証拠がないとして、その請求を断念している場合には、その証拠としてどのようなものが可能か、また、証拠化できるものはないか、弁護士と相談してみることも必要です。

また、残業代を裏付ける証拠がこちらの手元にはなくとも、使用者が保有していることが明らかな場合、その証拠を出させるよう求めることも考えられます。残業代については、上記の者と交渉する中で、解決することもあります。示談では、当事者双方の事情に応じて金額の調整が図られたり、示談金を分割払いにするなど、柔軟な解決方法をとることができるのが大きなメリットです。

しかし、示談交渉がまとまらない場合には、法的手続による解決に至ることになります。示談交渉での早期解決を強く望む場合には、適切なアドバイスを得て、必要な証拠を準備することや、正確に残業代を計算した上、使用者側と対等に交渉することが重要になってきます。

したがって、できる限り、労働者は交渉のプロである弁護士に依頼するのが良いでしょう。弁護士であれば、その知識と経験に基づき、根気よく使用者側と交渉することも期待できますし、使用者側の提示する金額が適正かどうかを判断できるのです。

もし示談で解決することができれば、法的手続をとるよりも大幅に短い時間で解決することができます。

労働審判手続

示談交渉で残業代を合意できなかった場合には、労働者は裁判所に労働審判手続を申し立てることができます(5条1項)。労働審判手続の申立てがあった場合、労働審判委員会が事件を審理して、調停の成立による解決の見込みがある場合には調停を試み、調停による解決に至らない場合には、労働審判を行います(1条)。

労働審判手続は、使用者と労働者の話し合いにより、紛争を早期に解決することを目的とした手続きです。早期解決の目的から、特別の事情がある場合を除いて、3回以内の期日で審理を終結することが制度上の原則となっていますので(15条2項)、上記で示したような証拠を提出できれば、短期での解決が望める手続です。

労働審判手続は、示談交渉と訴訟手続の中間のような非公開の手続で(16条),会議室のようなところで、裁判官と労働者側の専門家、使用者側の専門家の主導の下、使用者と労働者が同席して話し合いが進められることになります。残業代は、調停の成立や労働審判によって決められます。

しかし、労働審判手続は、労働審判に対し適法な異議の申立てがあれば、通常訴訟に移行します(22条1項)。

通常訴訟

残業代請求(併せて付加金の請求)の訴えの提起は、訴状を裁判所に提出して行います(133条1項)。また、訴状には、立証を要する事由について証拠となるべき文書の写しで重要なものを添付しなければなりません(民訴規則55条2項)。

また、訴状には、請求の趣旨及び原因を記載する(133条2項)ほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければなりません(民訴規則53条1項)。適切な訴状の提出がなされれば、裁判所は初回期日を設定します。その後は、期日が重ねられ、その間に双方の主張反論を出し合うことで、審理を進めていくことになります。

多くの場合、審理を進める中で裁判所から和解勧試がされることになります(89条)。それまでに提出された主張や証拠を見た裁判官が、そのときの心証で判決によらない解決方法を打診するのです。もし、裁判上の和解が成立し、合意の内容が和解調書に記載されれば、和解調書は確定判決と同一の効力を有します(267条)。

もし、和解が成立せず、判決まで進むということになれば、当事者を呼んでの質問(尋問)などの手続を経て、裁判所が判決を言い渡すことになります。労働者は、残業代請求(及び付加金)の全部又は一部認容の判決が言い渡され、判決が確定すれば、使用者による任意の支払により、また、支払がなされない場合には、強制執行の手続を経て、残業代(及び付加金)を得ることができます。

少額訴訟

少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払を求める請求についての簡易裁判所における特別手続です(368条以下)。請求する残業代が60万円以下の場合は、利用可能です。

少額訴訟は、原則として1期日の審理で終結し(370条1項)、証拠調べも、即時に取り調べることができる証拠に限られています(371条)。判決の言渡しは、原則、口頭弁論終結後直ちになされ(374条1項)、判決に対しては控訴が許されず(377条)、異議が認められるにすぎませんので(378条)、早期の解決が見込まれるといえます。

ただし、被告となった使用者が通常手続への移行を申述した場合は、通常手続によって審理されることになりますので(373条1項2項)、少額訴訟のメリットはなくなります。

まとめ

残業代請求に関しては、使用者が任意に応ずればともかく、当事者間で示談交渉がまとまらなければ、法的手続で解決することになります。労働審判手続、通常訴訟や少額訴訟も、労働者本人が起こすことも可能です。

しかし、残業代を巡る問題は、法律知識だけでなく、どのような裏付け証拠が必要か、残業代の計算はどのようにするかなど、残業代特有の専門的な知識も必要となりますので、弁護士のサポートなしには、納得できる金額を得ることは困難を伴います。法的に見合った金額の支払いを受けるためにも、残業代を使用者に請求しようとお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

回収できなければ弁護士費用はいただきません。まずはお気軽にご相談ください。※残業代の請求権には2〜3年の時効があります。お早めにお問い合わせください。※交通費などの実費のみ請求する場合がございます。

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