残業代を請求できるかどうか検討を要するケースにはどのようなものがあるのか

労働者が法定労働時間を超えて労働したとしも、実際は労働者の中でも管理職と呼ばれるような立場にあったり、業務内容に応じて変形労働制や裁量労働制などの様々な働き方が設定されていたりすることから、自身の労働が残業に当たるのか、また残業代を請求できるのか疑問となるケースもあります。

では、各労働時間制や、立場における残業代の扱いはどのようになっているでしょうか。

以下においては、各種の労働時間制や管理監督者等の概要を説明した上で、残業代支払義務の対象とならない労働者を除き、特殊な労働時間制でも、時間外労働に当たる場合には残業代を請求できることについて、説明します。なお、労働基準法は「労基法」、労基法施行規則は「労基則」と略記します。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、一定期間(変形期間)を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内で、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

変形労働時間制では、

  • 労働契約上の所定労働時間が法定労働時間を超える場合は所定労働時間を超える労働
  • 所定労働時間が法定労働時間内の場合は法定労働時間を超える労働
  • 1日1週の範囲では法定労働時間内であるが変形期間の法定労働時間の総枠を超える労働がある場合その超える部分の労働

は、それぞれ時間外労働となります。

1か月単位変形労働時間制(労基法32条の2)

1か月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

この制度を導入するには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出るか、就業規則等に定める必要があります。

1年単位変形労働時間制(労基法32条の4・32条の4の2)

1か月を超え1年以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、特定の日又は週に法定労働時間を超え、1日10時間まで、1週52時間まで、労働させることができる制度です。

この制度を導入するには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

1週単位非定型的変形労働時間制(労基法32条の5)

規模30人未満の小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業において、1週間当たりの労働時間を法定労働時間以内と定めた場合、1日10時間まで労働させることができる制度です。

この制度を導入するには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

フレックスタイム制(労基法32条の3)

フレックスタイム制とは、一定の期間(清算期間といいます)についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

この制度を導入するには、就業規則等に定めた上で、労使協定をお締結する必要があります。また、清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

フレックスタイム制では、清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働した場合、清算期間が1か月を超える場合にあっては、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えて労働したか、この超えた時間を除き、清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働した場合には、それぞれ超えて労働した時間が時間外労働となります。

事業場外みなし労働時間制(労基法38条の2)

事業場外みなし労働時間制とは、事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として所定労働時間労働したとみなす制度です。

労使協定で定めた時間が法定労働時間を超える場合には、労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

この労働時間制により算定されるみなし労働時間と別途把握した事業場内の業務に従事した時間の合計が法定労働時間を超える場合には、法定労働時間を超えた時間が時間外労働となります。

裁量労働制

裁量労働制とは、業務の遂行手段や時間配分について、労働者本人の裁量にまかせ、労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。

裁量労働制には、下記の2つのタイプがあります。

①専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)

専門業務型裁量労働制とは、デザイナーやシステムエンジニアなど、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない19の業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。

この制度を導入するには、労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には、時間外労働となります。

②企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)

企画業務型裁量労働制とは、事業運営の企画、立案、調査及ぶ分析の業務であって、業務遂行の手段や時間配分などに関して使用者が具体的な指示をしない業務について、実際の労働時間数とはかかわりなく、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。

この制度を導入するには、事業場ごとに、労使委員会を設置して、5分の4以上の多数の議決によって決議し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

また、この制度の適用に当たっては、個々の労働者の同意が必要となり、同意をしない労働者に対して、使用者は、解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません(労基法38条の4第1項6号)

労働時間規制の適用が除外される者(労基法41条)

下記の者は、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されません。

農業等従事者(労基法41条1号)

農業、漁業、養殖、畜産、水産等の事業従事者は、事業の性質上、適用除外とされています。

管理監督者(労基法41条2号前段)

管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。

「管理監督者」に当てはまるかどうかは、役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の実態によって判断されます。

機密事務取扱者(労基法41条2号後段)

機密事務取扱者とは、「秘書その他職務が経営者又は監督若しくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、厳格な労働時間管理になじまない者」(昭22.9.13発基17号)をいいます。

監視・断続的労働従事者(労基法41条3号)で、使用者が所轄労働基準監督署長の許可(労基則34条)を受けた者

「監視労働」とは、一定部署にあって監視することを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない労働をいいます。

また、「断続的労働」とは、実作業が間欠的に行われて手持時間の多い労働のことであり、手持時間が実作業時間を超えるか又はそれと等しいことが目安とされています。

まとめ

様々な業種の中には、残業代を請求できない労働者もいますが、特殊な労働時間制でも、時間外労働に当たる場合には残業代を請求できます。

そして、業種ごとに、残業代の計算方法には複雑なところがあります。特殊な業種に勤務し、残業代請求をお考えの方は、是非当事務所にご相談ください。

回収できなければ弁護士費用はいただきません。まずはお気軽にご相談ください。※残業代の請求権には2〜3年の時効があります。お早めにお問い合わせください。※交通費などの実費のみ請求する場合がございます。

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